カフェオーナーの年収は?成功事例から学ぶ収益の秘訣と注意点
近年、日本各地で個性的なカフェが増えています。コーヒーの風味や店内の雰囲気にこだわったカフェは、地域の人々の癒しの場として愛されています。そんなカフェを経営するオーナーの年収は、どのくらいなのでしょうか。
本記事では、カフェ経営の現状と、オーナーの年収の実態に迫ります。売上や利益率のデータを基に、カフェ経営の収支モデルを解説するとともに、成功事例から学ぶ収益アップの秘訣についてもお伝えします。また、カフェ経営の専門家である中小企業診断士の意見も交えながら、オーナーが陥りやすい失敗例にも触れます。カフェ開業を目指す方必見の内容です。
カフェ業界の市場規模と動向
まず、カフェ業界の市場規模と動向について見ていきましょう。外食産業総合調査センターのデータによると、日本のカフェ業界の市場規模は以下の通り推移しています。
年 | 市場規模(億円) |
---|---|
2015年 | 10,140 |
2016年 | 10,590 |
2017年 | 11,180 |
2018年 | 11,660 |
2019年 | 12,050 |
※出典:外食産業総合調査センター「外食産業市場調査」
この数字からわかるように、日本のカフェ業界の市場規模は、2015年から2019年にかけて約20%増加しています。この背景には、若者を中心とした「カフェ文化」の浸透があると考えられています。
特に、スペシャルティコーヒーに特化した「サードウェーブコーヒー」の人気が高まっています。焙煎にこだわり、産地や品種による味わいの違いを楽しめる本格的なコーヒーを提供するカフェが、都市部を中心に増えているのです。
また、ノマドワーカーやフリーランスの増加に伴い、カフェを仕事場として利用する人も増えています。Wi-Fiやコンセントを完備し、長居しやすい環境を整えたカフェが人気を集めています。
一方で、2020年に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が色濃く表れています。外出自粛による客足の減少や、テイクアウトへの移行など、カフェ業界も大きな打撃を受けています。withコロナ時代に合わせた新しい店舗運営のあり方が求められています。
カフェオーナーの年収モデル
それでは、カフェオーナーの年収について、具体的に見ていきましょう。ここでは、ある中規模カフェの事例を基に、年収モデルを試算します。
試算の前提条件
- 客単価:700円
- 1日の来客数:100人
- 月の営業日数:25日
- 売上総利益率:65%
- 人件費率:30%
- 家賃:月額50万円
年間収支モデル
項目 | 金額 |
---|---|
年間売上 | 2,100万円 |
売上総利益 | 1,365万円 |
人件費 | 630万円 |
家賃 | 600万円 |
その他経費 | 300万円 |
営業利益 | ▲165万円 |
※営業利益=売上総利益-(人件費+家賃+その他経費)
この試算では、年間売上が2,100万円、営業利益がマイナス165万円となっています。赤字経営に陥ってしまう計算です。
「カフェを開業すれば、年収1,000万円は夢ではない」などと謳う情報もありますが、それは非常にハードルが高いのが実情です。カフェ経営は、利益率が低く、固定費が重荷になりがちな業態。この事例のように、売上が上がっても、家賃や人件費で利益を圧迫されるケースが少なくありません。
「どんなに頑張っても、カフェだけでは生活できない」。都内でカフェを経営する佐藤オーナー(仮名、30代)は、そう漏らします。
「うちの場合、飲食に加え、ギャラリーを併設して絵画の販売もしています。カフェの売上だけでは、家賃を払うので精一杯。ギャラリー事業があるから、何とかやっていけるという状況ですね」
年収アップのためのポイント
では、カフェオーナーが年収を上げるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ここからは、成功事例に学ぶ、収益アップの秘訣を見ていきます。
1. 客単価を上げる
まず大切なのが、客単価を上げること。単にコーヒーを提供するだけでなく、フードメニューやスイーツの充実を図ることが重要です。
都内の人気カフェ「R cafe」では、ワッフルやパンケーキなどのフードメニューが人気を集めています。客単価は1,200円を超え、高い収益性を実現しています。
「うちは、スペシャルティコーヒーよりも、フードメニューで勝負しています。インスタ映えするビジュアルを追求し、口コミで人気が広がっています」とは、オーナーの鈴木さん(仮名、40代)。
2. 固定客を増やす
次に重要なのが、固定客を増やすこと。リピーターを獲得することで、安定した売上を見込めます。
神奈川県のカフェ「S cafe」では、ポイントカードの導入や、季節のイベントの開催など、様々な施策で固定客の獲得に力を入れています。
「うちは、常連さんがほとんどです。お客様の名前や好みを覚えて、一人一人に合わせたサービスを心がけています。そうした積み重ねが、固定客を増やすコツだと思います」と話すのは、オーナーの高橋さん(仮名、50代)。
3. 複数の収益の柱を持つ
カフェの売上だけでは、利益を出すのが難しいのが実情。複数の収益の柱を持つことが、安定経営のカギを握ります。
先に紹介した「R cafe」では、カフェ事業の他に、コーヒー豆の小売りやオンラインショップでの販売も手がけています。
「カフェの売上は天候に左右されがちですが、物販は天候に関係なく売上が立ちます。オンラインショップでは、店舗の何倍もの売上を上げることもあります」と鈴木さん。
失敗しないために押さえるべきポイント
一方で、カフェ経営には、多くの落とし穴も潜んでいます。中小企業診断士の田中先生に、失敗しないためのポイントを伺いました。
「カフェ経営で最も重要なのは、コンセプトをしっかりと打ち出すことです。ターゲットとする客層を明確にし、他店との差別化を図ることが大切。看板メニューや店内の雰囲気など、店の個性を際立たせましょう。
また、立地選びも慎重に行う必要があります。家賃が高すぎる物件を選んでしまっては、いくら売上が上がっても利益が出ません。周辺の商圏調査をしっかりと行い、適正な家賃の物件を選ぶことが重要です。
さらに、食材の仕入れルートを確保し、原価管理を徹底することも欠かせません。適正な価格設定で、利益を確保できる体制を整えましょう。
加えて、スタッフ教育にも力を入れることが大切。接客スキルの向上は、リピーター獲得に直結します。スタッフとのコミュニケーションを密にし、チームワークを高めていくことが求められます」。(田中先生)
まとめ
カフェオーナーの平均年収は、300万円から500万円程度と言われています。事例で見たように、売上を上げても、家賃や人件費で利益を圧迫されるのがカフェ経営の実情です。年収1,000万円を実現するのは、非常にハードルが高いのが現状と言えるでしょう。
年収アップのためには、客単価を上げる工夫や、固定客の獲得、複数の収益の柱を持つことが重要です。経営の数字に明るくなることも必要不可欠。適正な価格設定や原価管理を意識しましょう。
何より大切なのは、自分なりの強みを活かし、個性あるカフェ作りを目指すこと。コンセプトを明確にし、他店と差別化を図ることが成功の鍵を握ります。スタッフと共に、愛されるカフェを目指して頑張っていきたいものですね。
カフェオーナーの道は、決して楽なものではありません。しかし、コーヒーを通じて人々に癒しと喜びを提供できるのは、他にはない魅力があります。リスクを十分に理解した上で、自分なりのカフェ経営を追求していってほしいと思います。