ウニ養殖の年収は?現場の実態と成功のポイントを解説

DAZN

ウニは、日本の海の幸を代表する高級食材の一つです。とりわけ生ウニは、トロけるような濃厚な味わいと鮮やかな色合いから、寿司ネタの王様とも呼ばれています。そんなウニの需要は年々高まっていますが、天然ウニの漁獲量は減少傾向にあります。そこで注目されているのが、ウニの養殖です。

本記事では、ウニ養殖に携わる現場の声を基に、ウニ養殖の年収の実態に迫ります。あわせて、ウニ養殖の現状と課題、成功のポイントについても解説します。水産庁の統計データや、水産養殖の専門家の知見も交えながら、ウニ養殖のリアルな姿を余すところなくお伝えします。

ウニ養殖の現状と将来性

水産庁の統計によると、日本のウニ漁獲量は以下の通り推移しています。

漁獲量(トン)
2000年23,587
2005年18,586
2010年13,890
2015年10,616
2020年9,428

※出典:水産庁「漁業・養殖業生産統計」

この数字からわかるように、日本のウニ漁獲量は、この20年間で半分以下に減少しています。この背景には、乱獲による資源の枯渇や、海洋環境の変化などがあると考えられています。

一方で、高級寿司店を中心に、生ウニの需要は堅調に推移しています。国内の供給だけでは賄いきれず、チリやロシアからの輸入に頼る状況も続いています。

こうした中、安定的にウニを供給するための手段として注目されているのが、養殖です。ウニの生態に合わせた飼育環境を整えることで、天然ウニに引けを取らない品質のウニ生産が可能になってきています。

実際、北海道や三陸地方を中心に、ウニ養殖に取り組む漁業者が増えています。中でも、エゾバフンウニの養殖は、高い品質と安定した収量が期待できるとして、大きな注目を集めています。

今後、ウニ養殖の技術がさらに発展し、生産量が拡大していけば、日本の食卓により多くのウニが並ぶようになるかもしれません。ウニ養殖は、日本の水産業の新たな可能性を切り拓く分野と言えるでしょう。

ウニ養殖の収支モデルと年収の実態

それでは、ウニ養殖の収支モデルと、養殖業者の年収の実態について見ていきましょう。ここでは、北海道でエゾバフンウニの養殖に取り組む、ある業者の事例を基に解説します。

養殖規模と初期投資

  • 養殖規模:1,000平方メートル(約10万個のウニを養殖)
  • 初期投資:約5,000万円(養殖施設の建設費、種苗費、人件費など)

年間収支モデル

項目金額
売上6,000万円(1個600円で10万個出荷の場合)
種苗費500万円
餌代1,000万円
人件費1,500万円(正社員3名、パート2名)
減価償却費500万円
その他経費500万円
営業利益2,000万円

※養殖2年目以降の年間収支モデル

この事例の場合、養殖2年目以降の年間売上は6,000万円、営業利益は2,000万円となっています。ただし、この数字はあくまでも一例であり、ウニの販売単価や生産量、経費の違いによって、収支は大きく変動します。

また、初期投資の回収には数年を要するケースが一般的です。事例の業者の場合、初期投資5,000万円に対し、年間営業利益が2,000万円なので、単純計算では3年目以降に黒字化することになります。

ウニ養殖業者の多くは、個人事業主や小規模法人です。年間売上が1億円に届かないケースも少なくありません。その場合、経営者の年収は500万円から1,000万円程度にとどまるケースが多いようです。

一方で、大規模な養殖施設を運営し、年間売上が2億円を超えるような業者もあります。そうしたトップクラスの養殖業者の年収は、2,000万円を超えるケースもあると言われています。

「うちは比較的順調にいっているほうですが、それでも利益率は20%程度。ウニ養殖で大もうけできると思ったら大間違いですよ」と語るのは、先の事例の業者です。

「ウニ養殖は、儲かる事業というよりは、地域の資源を守り、後世に伝える仕事という自覚が必要です。利益を追求するだけでは、長続きしません」。ウニ養殖の第一人者である北海道大学大学院教授の川崎健先生も、同様の見解を示しています。

ウニ養殖で成功するためのポイント

では、ウニ養殖で成功するには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。前出の川崎先生に、ポイントを伺いました。

「ウニ養殖で何より大切なのは、ウニの生態をよく理解し、それに合わせた養殖環境を整えることです。水温や水質、餌の種類や量など、育てるウニの種類によって、最適な条件は異なります。

次に重要なのが、良質な種苗の確保です。天然ウニの稚ウニを採取するケースが多いですが、親ウニの選別が適切でないと、品質のばらつきが大きくなってしまいます。できれば、人工種苗を使うことをおすすめします。

さらに、ウニの生育状況をこまめにチェックし、必要に応じて密度調整を行うことも欠かせません。適切な数のウニを育てることが、品質向上と安定生産につながります。

販売面では、付加価値の高い商品づくりが求められます。生ウニはもちろん、ウニを使った加工品の開発にも力を入れるとよいでしょう。地元の料理店とタイアップするのも一案です。

最後に、ウニ養殖は長期的な視点を持つことが何より大切だと思います。利益を追求するだけでなく、地域の資源を守り、持続的に活用していくという姿勢が欠かせません」。(川崎先生)

まとめ

日本の食卓に欠かせない高級食材であるウニ。その安定供給に向けて、ウニ養殖への期待が高まっています。北海道や三陸地方を中心に、すでに多くの漁業者がウニ養殖に取り組んでいます。

事例で見たように、ウニ養殖の事業規模によって、養殖業者の年収は数百万円から2,000万円超まで、幅があることがわかりました。参入障壁が高く、利益率も高くない世界ではありますが、工夫次第では、十分な利益を上げることも可能なようです。

ウニ養殖で成功するには、ウニの生態に対する深い理解と、それに基づく最適な養殖環境の整備が何より重要です。あわせて、良質な種苗の確保や、販売戦略の工夫も欠かせません。

何より大切なのは、ウニ養殖を長期的な視点で捉え、地域資源の保全と持続的な活用を目指す姿勢だと言えます。そうした意識を持って取り組むことが、ウニ養殖の発展と、日本の水産業の未来につながるのではないでしょうか。

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