プロ野球選手の年俸の決め方は?査定の仕方・給料の仕組みは?
毎年オフシーズンになると、プロ野球選手の年俸が話題となりますよね。
年俸が1億円を突破する選手や2億円の大幅アップという選手もいれば、逆に1億円~2億円以上の大減俸となる選手もいます。
巨人の杉内俊哉投手は、2015年に90%ダウンとなる4億5000万円の大減俸となりました。中日の岩瀬仁紀投手も2015年に2億5000万円の大幅ダウン、2012年には巨人の小笠原道大選手が3億6000万円の大減俸、2010年にはソフトバンクの松中信彦選手が2億円の大減俸でした。
プロ野球選手は、各球団に勤めている球団職員ではなく、あくまでも個人事業主として球団と契約していますので、成績次第では前年の2倍~3倍以上の年俸を受け取ることもできますが、逆に半分以下の大減俸になる可能性もあります。
プロ野球選手の年俸の決め方は?
プロ野球選手の年俸は、各球団の査定によって決まります。球団には選手1人1人の全成績を査定する査定員がいて、投手なら1球ごと、野手なら1打席ごとに厳しく採点します。
球団ごとに査定の仕方は異なりますが、ある球団では査定項目が260以上にもなると言われていますので、かなり細かく査定員がチェックしていることがわかります。
プロ野球の年俸は加点方式
一般的に、プロ野球の年俸査定は加点方式で行われています。たとえば、ヒットが+3ポイント、ホームランが+5ポイント、さらに一打逆転の場面でヒットを打つと+2ポイントというように、成績によってポイントが加算されていく仕組みです。
野球はチーム戦となりますので、どれだけ個人の成績が優れていても、個人成績がチームの勝利に貢献していなければプラスの評価を受けにくくなります。逆にチャンスの場面でヒットやホームランを打つと、ランナーがいない場面でのヒットやホームランに比べて、評価が非常に高くなります。
同じホームランでもソロホームランは評価が低い
プロ野球で最も盛り上がることの1つにホームランがあります。
たとえば、同点のまま9回裏の場面では、もしホームランを打てばサヨナラホームランとして試合が終了となります。ホームランを打った選手はその日に最も活躍した選手として、お立ち台でヒーローインタビューを受けることができるでしょう。
9回裏の場面では、仮にソロホームランだとしてもチームを勝利に導くことができますので、非常に価値のあるホームランと言えます。
しかし逆に、同じソロホームランでも10対0でチームが負けている状態で、仮に9回裏にソロホームランを打った場合はどうでしょうか。10対0の大差のゲームで、さらに9回裏となれば、仮にホームランを打っても10対1にしかなりませんので、勝敗には全く影響しません。チームとしては、全く意味のないホームランとなります。
ペナントレース終盤で、個人タイトルが狙える位置にある選手であればわかりますが、年俸への影響や査定という意味では、チームの勝利に貢献しないホームランは非常に価値の低い一打と言えます。
プロ野球の契約更改で年俸アップの交渉はできる?
プロ野球では、毎年オフシーズンに契約更改を行っていますが、各球団に所属する選手は球団が提示する金額を了承した上で、契約書に捺印します。
プロ野球選手は個人事業主ですから、球団と選手は取引先の関係となります。そのため、球団が提示する金額に納得できない場合や金額に不満がある場合には、契約書にサインはせずに保留することができます。
また、プロ野球選手の年俸は野球協約上の減額制限がありますので、前年の年俸が1億円以下なら25%、前年の年俸が1億円を超える場合は40%を超える減額の場合には、選手に同意を得ることが条件となります。同意が得られなければ、球団は選手に対する保有権を放棄することになりますので、選手は自由契約としてどの球団とも自由に契約をすることができるようになります。
年俸の交渉ができるのはごく一部の選手だけ
プロ野球の契約更改は、球団側と選手との個別交渉ではありますが、基本的には金額が記載された契約書を選手がサインするだけという流れで行われます。特に、実績がない2軍選手は、球団側から提示された金額をそのまま受け入れているのが現状です。
そもそもプロ野球の契約更改は、年俸を出来る限り低く抑えたい球団側と、年俸を出来る限りアップしたい選手との交渉となりますので、よほど実績のあるスター選手でもない限りは、選手個人が球団側と年俸を交渉するということは難しいのです。
年俸の交渉ができるのは、球団側から「この金額で納得できないなら他の球団へどうぞ」と言われても、「それなら他の球団に行きます」と言えるような実績のある中心選手くらいなのです。
プロ野球選手のインセンティブとは?
プロ野球選手の年俸には、基本となる年俸の他に成績によってプラスされるインセンティブ契約が含まれることがあります。
たとえば、投手なら10勝以上をマークした際に1勝するごとに+1,000万円、防御率が2.00以下なら+3,000万円、投球回が200イニングを超えたら+1,000万円というような契約です。
打者なら打率が3割を超えたら+1,000万円、ホームラン30本以上で+3,000万円、100打点以上で+2,000万円というように、基本年俸の他に契約することをインセンティブ契約と言います。プロ野球では「出来高」とも呼ばれる仕組みです。
プロ野球選手の年俸総額は基本年俸+インセンティブ
イチロー選手は年俸200万ドル+インセンティブが最大300万ドル
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メジャーリーグで活躍しているイチロー選手は、基本となる年俸にプラスしてインセンティブが含まれる契約であることが報じられています。
2017年にマーリンズからイチロー選手に支払われる金額は、年俸が200万ドル(約2億4,000万円)、+インセンティブとして最大300万ドル(3億6,000万円)で、合計500万ドルの契約とされています。
インセンティブの内容は、250打席、300打席に達した際にそれぞれ30万ドルのボーナス、以降も50打席ごとに40万ドルのボーナスが支払われる仕組みで、インセンティブの総額は300万ドルにもなります。
前田健太投手は最大100億円以上のインセンティブ
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2016年1月にドジャースと契約した前田健太投手は、年俸は8年総額2,500万ドル(1年あたり312万ドル※日本円で約3億8,000万円)ですが、インセンティブが最大1億620万ドルと報じられて話題となりました。
インセンティブの内容は、開幕のロースター(登録枠)に入れば+15万ドル、1シーズンで15回先発すれば+100万ドル、1シーズンで20回先発すればさらに+100万ドル、1シーズンで25回先発すればさらに+150万ドル、それ以降は30先発、32先発で150万ドルが支払われます。また、90投球回で+25万ドルや10投球回ごとに25万ドルが上乗せされて、200投球回に達すれば+75万ドルなどもあります。
ペナルティが発生する逆インセンティブ契約とは?
インセンティブ契約は、球団にとってはかなりお得です。設定された数字を残せなければ1円も支払う必要がないわけですから、球団側からすればノーリスクで最大の効果が得られる契約と言えます。
また、インセンティブ契約は選手にとってもモチベーションアップに繋がります。前田健太投手のように、基本の年俸はかなり低く設定されていますが、全ての条件をクリアできれば、年俸15億円以上を手にすることができます。
ただ、インセンティブ契約には条件を満たした場合に支払われるインセンティブだけではなく、設定された数字をクリアできなかった場合に金銭的なペナルティが発生する「逆インセンティブ契約」もあります。
逆インセンティブ契約は、営業職などによく見られるノルマのようなものとなりますが、プロ野球選手の中には高額な年俸を受け取る代わりに、最低限の成績を残せなかった場合にペナルティが課せられる逆インセンティブ契約をしている選手もいます。
プロ野球選手は個人事業主となりますので、選手ごとに契約内容や年俸総額が大きく異なるようになります。